posted by kumaco
青空の美しい、1月半ばのある晴れた日の朝に、レオは眠るように天国へ旅立ちました。病気のため2ヶ月で2度の手術に耐え、11歳10ヶ月の生涯でした。
レオが初めてkumaco両親の家にやって来たのは、五月の花咲く頃。
ゴールデンレトリバーを探していることを犬の訓練所の方にお願いしていたのですが、ブリーダーさんとの間を仲介して下さって、ある夜に連れてみえました。
訓練士さんは子犬1匹のために2人で来られ、子犬が福岡から来たことを話すと、別れ際に ”どうぞ、最後まで大事にしてあげて下さいね” と涙ぐまれました。もちろんです、と答えると、少しホッとした顔をされて帰られました。
大切に飼うといっても、犬と言えば外で飼うもの。と思っていた我が家でした。が、まだ寒いからとりあえず玄関先か勝手口で住まわせよう、こうしてレオとの暮らしが始まりました。
一緒に暮らしてみると、新しい子犬は人間のことが大好きで、少しでも側に居たいと思っているらしいことに気付きました。繋がれたリードの長さギリギリまで、首が締まっても少しでもみんなの近くにいたいと我慢強く聞き耳を立てている姿に根負けした家族は、次第にリードの長さを長くしていき。。 そしてレオが家中を我が物顔で走り回るまで、そう長くかかりませんでした。
そんな愛嬌たっぷり、人間ラブラブ光線を出すレオちゃんにも敵わない相手がいました。それは、犬嫌いのおばあちゃん。90歳を過ぎた老人を変えるのは至難の業と思われた、そんなある日。
おばあちゃんが足を踏み外して、階段から落ちたのです。あいにく家族は全員留守。あまりの痛みで動くことができず、思わずヒーヒー泣いて(=本人談)いたら、レオが真っ先に飛んできて、おばあちゃんの顔を一生懸命ペロペロ舐め始めたんだそうです。そうされるうち不思議と元気が湧いてきて、立ち上がる勇気が出たのだそう。“あの時、レオちゃんがいてくれたからね。”レオの背中を掻いてやりながら、おばあちゃんは話しました。そう、レオは祖母もてなずけてしまったのでした。それ以来レオは、毎夕祖母にマッサージしてもらうように。
でも、人間ラブが勢い余ってちょっと恥ずかしいことも。通りすがりの女子高生の “か〜わいい!” なんて黄色い声が聞こえると ”なになにっ、ボクのこと?”と振り返るんです。一体誰に似てこんな自意識過剰なんじゃっ!飼い主の方は逃げ出したくなることもありました。三度の飯より人と遊ぶ方が好きという、ヘンな奴でした。
そう。レオは変わった犬で、いろいろ思うことがあるようでした。
ある日散歩をしていると、突然ある場所で立ち止まってじっと母の顔を見つめました。何か言いたいのかしら?と思っていると、ちょうどそこの家からピアノの音が聞こえてきたのです。”ああ、そうね。kumaco姉ちゃんと同じよね?”と話しかけると、納得したように歩き出しました。私がレオと暮らしたのは、結婚して家を出るまでの始めの3年間。ピアノも持ち去りましたが、TVでピアノの音が流れるとじーっ、と耳を傾けていたそうです。
去年の夏頃から、散歩に連れ出しても遠くへ行かないようになりました。門を出て西に20m行くと引き返し、帰るのかと思えば家を素通りして、東へ。東へ30m行けば大きな通りがあり、手前で立ち止まって何やら思案している模様。再び引き返すと、また家の前を素通り!!それを3-5回繰り返す、ということが起きるようになりました。獣医さんは、歳だから無理をさせず行きたいようにさせるように、とのこと。歳のせいでレオもぼんやりしてきちゃったのかしら?と家族は話していました。
その時は分からなかったのですが、レオは癌を患っていて重度の貧血状態になっていました。推測ですが、もし遠くまで行って貧血で倒れてしまったら、大型犬を抱いて連れて帰るのは大変なこと。いつも散歩に連れて行ってくれる父のことを気遣って、体調に合わせて歩いて帰れるよう距離を加減していたようです。
去年の9月以降、レオは手術を2度乗り越えました。痛い思いを何度もさせることに躊躇もありました。しかし手術の後、見たこともない穏やかな表情をするようになりました。一方的なエゴかもしれませんが、私には、レオが “生きてて、良かった〜!”と心底微笑んでいるように感じました。レオは両親の手厚い看病のもと、最後まで人の温もりの側にいることができて幸せだったんじゃないかな、と思います。
遠く離れているからか、私はレオがいなくなった実感が湧きませんでした。
そんなある日、学校でレッスンを終えて帰ろうと廊下を歩いていると、ふとピアノの音色が聞こえてきました。モーツアルトを聴いても、ベートーベン、ブラームス、ロッシーニ、シューマン、ドビュッシーだって何とも感じなかったのに、その音は強烈にレオと結びつきました。
そして、レオはもういなくなってしまったのだ、と思いました。
ドアの開けられたその部屋では、金髪の愛らしいフランス人の少女らが、バレエのレッスン中でそのピアノに合わせて踊っていました。
その曲は、“薔薇色の人生 (La vie en rose)”。
この曲を天国のレオちゃんに、捧げます。
“La vie en rose” (by Édith Piaf, English translation: Mack David)
Hold me close and hold me fast,
私を近くに、しっかり抱き寄せて
This magic spell you cast,
あなたの言う、この魔法の呪文
This is La Vie En Rose.
これが薔薇色の人生。
When you kiss me, Heaven sighs,
あなたの口づけに、天国がため息をつく
And though I close my eyes,
目を閉じていても
I see La Vie En Rose.
薔薇色の人生が見える。
When you [...]